こんにちは!肥後庵の黒坂です。
アメリカやオランダが海外にフルーツを輸出して稼いでいる中、これまで日本はフルーツ輸出の戦果は芳しくないと言われ続けてきました。しかし、ここ数年間で一部の国に日本のフルーツ 輸出が大きな伸びを見せていることがデータで明らかになってきました。日本のフルーツがよく売れている国は台湾・香港・シンガポールといったアジアです。特に台湾や香港は日本のフルーツをよく買ってくれるお得意様になっています。なぜこれらの国は日本のフルーツを買ってくれるのでしょうか?
※本記事内のグラフは財務省貿易統計から筆者が作成したものです。
海外に向かう日本のフルーツ
ここ数年で海外への輸出を大きく伸ばすニュースが相次いでいます。例えば下記に引用した通り、熊本県は農林水産物の輸出が過去最高を記録しています。
熊本県産の農林水産物の平成28年度輸出額が前年度比12%増の48億6千万円となり、過去最高を更新した。牛肉やイチゴが順調に伸びたほか、中国や韓国での住宅需要が木材輸出を押し上げた。
引用元:熊本県の農水産物輸出過去最高 28年度 前年度比12%増48億円
この他、あまおうなど一部のいちごブランドをアメリカに向けて輸出をする準備が始まっています。近隣のアジア諸国以外の国にも、海外販路を拡大する取り組みが話題になっています。
さて、フルーツ輸出の伸びについてはグラフで見える化してみました。下記のグラフはぶどう、りんご、いちごの輸出額の推移を示したものです。
このようにここ数年間 でそれぞれ高い伸びを見せていることがわかると思います。もっとも輸出額が大きいのはりんごで133億円超とかなりのものです。「フルーツ輸出をドル箱にしているアメリカやオランダなどと比べると、日本のフルーツの輸出規模はまだまだ小さい」と指摘する声があるものの、日本のフルーツ輸出の伸びを見る限りは「ここ数年で海外販路開拓が進んでいる」といえるのではないでしょうか。
お得意様は台湾と香港
この輸出先にはどういった国があるのでしょうか?下記は財務省貿易統計の直近の通年実績から作成したグラフです。
このように台湾や香港など近隣国への輸出が大きく占めていることがわかります。
台湾や香港はフルーツをギフトにする文化がある
私達日本人は毎日の食卓で食べるフルーツと、贈答用の高級フルーツを使い分けています。当店、肥後庵では贈答用フルーツを取り扱っていますが、売上の9割以上は自宅ではなくギフト用に売れています。また、老舗高級フルーツ店として知らない人のいない「銀座・千疋屋」さんは、2016年10月放送のカンブリア宮殿の中で購入するお客様の約9割が「フルーツを贈答用で買っている」と答えています。日本国内のフルーツは自宅用・ギフト用に棲み分けがされているといえます。
このように高級フルーツを贈答用に使う文化は、アメリカやヨーロッパの人たちには奇異に映るかもしれません。しかし、台湾や香港の人たちは日本人と同じく高級フルーツを贈る文化を共有しているために、彼らは日本のプレミアムフルーツを贈答用に使っているのです。このことはジェトロの調査で明らかになっています。
ギフト用果実としては「日本産」であるということ自体が、消費者が商品を選択する上でのポイントとなっている。
引用元:ジェトロ「台湾市場における日本産果実」
彼らは「日本産だから」という理由でフルーツを買っているのです。また、贈答用の他、自宅用で日本のフルーツを買っている人も見られます。現地の高級百貨店では安心安全で品質の良い日本のフルーツを「家族の健康のために」と現地のフルーツに比べて割高ながらも、買っているのは富裕層たちです。
フルーツを贈答に使うという同じ文化を共有していることが、香港や台湾に売れている大きな理由といえるでしょう。
物理的距離の問題
日本のフルーツが売れている国を見ると、いずれも日本と物理的距離が近いアジアが中心であることがわかります。これはフルーツを届けるのに要する時間と関係しています。福岡と台北の距離は1280km、福岡と香港は2025kmととても近いのです。
フルーツによって異なりますが、果物のおいしさは熟成度による部分があります。例えばフィリピンのマンゴーは、国産のブランドマンゴー「宮崎の太陽のタマゴ」などと比べると固くて甘みがないと思う人が多いと思います。それは海外に輸出することを想定して熟する前に早採りするからで、フィリピン現地で熟成度の高いマンゴーを食べると、日本のスーパーに置かれているものとはまったく違ったおいしさに驚かされます。
日本のフルーツのおいしさは手間暇をかけ、日本人の味覚にあう品種を育ててきたからということもありますが、良いものはしっかり熟するまで育てているからという理由も大きいのです。当店で置いている完熟マンゴーなどは、樹木から自然にポトリと落ちるまで収穫せず完熟度を100%に近づけて収穫することで極上のおいしさとなっています。しかし、熟したフルーツは樹木から離れた後も「追熟」といってどんどん熟していき、あまり期間をおいてしまうと傷んでしまいます。
日本のフルーツのおいしさの真髄を味わえるのは、樹木についたまま熟成させたものです。そうなると輸送に時間がかからない近隣国に限られてしまうというわけです。
日本のフルーツが台湾や香港といった近隣国で盛況なのは、贈答文化や物理的距離によるものです。これから輸送技術や鮮度維持向上により、海の向こうへ日本のフルーツが広がっていくことを心から願っています。
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