こんにちは!肥後庵の黒坂です。
世の中には「奇跡なんて起きない」と考えている人の方が、その逆を考えている人より多いのではないでしょうか?人は確率にしばられてその人生を送っています。「明日の降水確率は10%」と聞いて、傘を持って歩く人はいないことからもわかります。
確率の低いことが成功裏に導かれるケースは決して多くはありません。しかし、低確率であるからこそ、その挑戦する過程ではドラマが生まれます。その現実ドラマは時に、映画が見せてくれる奇跡を上回る画を見せてくれるものであり、「現実の出来事を映画化」という事例に導かれるケースもあります(学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話など)。
さて、前置きがずいぶん長くなりましたが、メロン除草剤事件についてはまさに奇跡としか思えない、いえこれこそ奇跡と呼ぶにふさわしい出来事が起きましたのでこの記事を書いています。
「奇跡というものはじっと待っていて起きるものではない。また、一人の力で起こせるものでもない。奇跡とは多くの人の想いが一つになった時に起こるものなのだ」
メロン除草剤事件を経て、私の中で奇跡の考え方は上記のものになりました。
5日間で1,600万円が集まるという奇跡
先日書いたメロン除草剤散布事件はその後どうなった?寺坂農園を取材はメロン除草剤事件の被害者、寺坂さん本人に取材して書きました。話を聞く上で辛い事件を思い出させることになってしまい、寺坂さんには申し訳ないと思いつつも「少しでも力になりたい」という思いで最後までお付き合い頂いたのです。
寺坂さんは除草剤事件で経済的に事業が立ち行かなくなる程のダメージを負い、再起をクラウドファンディングにかけることに決めました。しかし、それは一時しのぎの処置に過ぎず、融資は問題の先送りで根本解決にはならないのです。事件の一撃により、寺坂さんは何も手につかなくなるほどの痛手を負っている中、「支援がしたいのでクラウドファンディングに挑戦しましょう!」との多くの声に突き動かされ、立ち上がる気力を取り戻しました。
クラウドファンディングの「キャンプファイヤー」によると、19カテゴリで4200件以上のプロジェクトがあり、無事目標金額に達したプロジェクト数は1,117件だそうです。そうなるとざっくり成功率は26%ということになります。また、多くのプロジェクトの設定金額は50-100万円以下であることを考えると、寺坂さんの設定した1,600万円というのはものすごく高いハードルでした。「設定金額が100万円以下でも26%という低成功率の中で、1,600万円という高額設定か…これで成功したらまさに”奇跡”だ。だが、その奇跡を信じたい!”無縁社会と呼ばれる日本も捨てたもんじゃない!”と言いたくなるような結果を見たい」と私は自分事のように心から成功を祈り続けていました。
願いは天に届き、クラウドファンディングは開始とともに瞬く間に人を集め、わずか5日間であっという間に目標金額に達して大成功を納めたのです。たった5日間で日本全国から1,600万円が北海道の農園に集まった…クラウドファンディングという仕組みにより、まさに奇跡が起こったのです。
成功したのは寺坂さんの人柄
もちろん、世の中には色んな価値観の人がいますから、すべての人がこの取り組みに賛成しているわけではありません。寺坂さんは次のようにクラウドファンディングを振り返ります。「光が強く当たる部分には陰も深く濃く出るのでしょう。ネガティブ投稿が辛かったです。ツイッターでは”このプロジェクトを中止させろ!”という投稿を見ましたし、フェイスブックでは”人の金を当てにするなら農家やめろ!!”痛烈なコメントが書かれました。これはとても、悲しく辛かったです。」と。そんな批判があるにも関わらず、プロジェクトはあっという間に成功を迎えました。「寺坂農園さんを救おう!」とみんなが手を取り合い、奇跡を信じた力がこのプロジェクトを牽引したのです。
私は今回のプロジェクトが成功したのは、寺坂さんが率直なお人柄の持ち主だったことによると考えています。直接やり取りを経て「この方は裏表のない、まっすぐに生きている方だな」と思いました。自分を高く見せることはせず、とても謙虚で周囲や社会、特にお客さまには驚くほど強い感謝の気持ちをお持ちだなと心洗われる思いになりました。
寺坂さんはクラウドファンディングで目標支援金額が集まった時、「もう支援申し込みを終了します」といいました。その気になればもっと支援金を受けることが出来たにも関わらず、です。これは寺坂さんが支援をしてくれるみんなの気持ちを大切に、本当に大切に想うからこそのものです。
寺坂さん「目標支援金額が集まった時点で、直ぐに支援申込を終了してもらうことにしました。
(中略)
必要な金額は明確で、それ以上のご支援を頂いても、本来の目的とそれに対して支援して頂く皆さんの気持ちに沿った使い道がないからです。」
引用元:マクアケ「目標額を超えた支援金額の使い道を報告します」
今回のクラウドファンディングは、寺坂さんだったからこそうまくいったのだと思います。
やっぱりこの事件は犯人の意図とは逆の結果になる
メロン除草剤事件は本当に辛く、悲しいものでした。犯人は明確な悪意を持ち、寺坂農園さんを陥れようとして引き起こした事件です。間違っても良かれと思ってのものではありません。私は最初からこの事件は残念ながら犯人の望むような結果にはならず、長い目で見れば寺坂農園さんに支持を集めるだろうと思っていました。そして今回のクラウドファンディングで被害を受けた金額を補填することができることが確定した今、「やっぱりこの事件は犯人の意図とは逆の結果になる」と嬉しく思っています。今回の補填はあくまで被害を受けた部分にあてるわけですから、寺坂さんはこの事件で一円も得をしてはいません。いや、むしろ後処理やクラウドファンディングの手間ひまを考えれば、なにもない方が良かったといえるのかもしれません。ですがこの事件を経て、寺坂さんはお金には変えられない大きな贈り物を全国から受け取っているのです。それは犯人が予想だにしない、そして陥れようとした意図とは真逆のものです。寺坂さんはクラウドファンディングの成功を次のように振り返ります。
寺坂さん「今回クラウドファンディングに取り組んでみて、この仕組みがあることに、感謝しています。
犯人が未だ逮捕されない状況でクラウドファンディングがなかったら、昨夏の犯罪被害でやられ損のまま、一生生きていくことになったでしょう。
深い悲しみと理不尽な世の中への怒りを感じながら農業を続けていくことになっていたと、思います。
しかし、今回のクラウドファンディングの結果を受けて世界は一転しました。世の中は愛に満ちている。人って素晴らしい。
事件への認識もガラリと変わりました。事件のおかげで、寺坂農園がどれだけ人に愛され応援されているかを知ることができました。
人の持つ愛のエネルギー、応援・支援の気持ちをクラウドファンディングという仕組みで、形に変えていく。そして、よりより社会を作り出していく。
この仕組みがあることに、心から感謝しています。」
寺坂さんへの取材より
いかがでしょう?このような展開はまさに映画や小説などでありそうなものではありませんか?「北海道の農園が除草剤の攻撃を受け、再起不能レベルのダメージを受けたものの、犯人の一撃をはねのけクラウドファンディングで日本中から愛を集めて再び立ち上がる」。このようなあらましを聞かされても、多くの人は「そんな映画みたいな美談は起こりっこないよ」と思ってしまうのではないでしょうか?しかし、これこそまさに小説や映画を超えるような奇跡が起こり、寺坂農園さんは立ち上がる力を得ることになりました。おそらく、寺坂さんにとってはひと夏の事件から始まり、愛に包まれてまた歩み出すという”一生忘れられない半年間”だったと思います。
奇跡が起きる時、それは1人の人間によってもたらされるものではありません。これは日本人1億3,000万人の人が見守る中で、人を救いたいという気持ちが起こしたみんなで作り上げた奇跡です。今年の夏は寺坂農園さんにとって、去年以上に熱い熱いものになるでしょう。出荷するメロンに込められた感謝の気持ち、それが日本中に運ばれて幸せの輪が出来ていく…本当に人は人の中で生きているのだと思います。
奇跡を起こした皆の想い、人の気持ちをつなげるクラウドファンディングの仕組み、そして何より、最後まで諦めなかった寺坂さんにスタンディングオベーションです。おめでとうございます!そしてこれからも応援しております。
コメントを残す